イ・サン(李祘)

2011年7月29日

監督キャリア2度目の名君正祖。「おとぎ話
のように描きたかった」との言葉通り、粋な設定
が随所に。第33話あたりから祖父英祖の認知症
を巡る駆け引きも登場。実に深い人間ドラマ。

「覚えていますか切ないあの出来事を~♪」の劇中歌は耳に残りますね。

実はイビョンフンは1986年から5年間、朝鮮王朝500年シリーズの監督を務め、李氏朝鮮の王27人を全て描いた経験があります。だからこそ、「薯童謡」で新しい王の描き方を試みたのでしょうし、このイ・サンも「おとぎ話のように描きたかった」とコメントしています。

李氏朝鮮時代(1392~1910)はそれまで仏教国だった半島に儒教支配を徹底した時代でした。
儒教については別にブログで述べるつもりです。この時期は厳しい身分制度まっさかり、文化的自由もかなり制限されているとき。しかしこのドラマは、それが時の為政者次第であり、それに抗った良心的な人物もいたことを感じさせます。狭い考えにとらわれない、歴史的に良い為政者の代表だった正祖イ・サン。この時代に朝鮮では、文化のルネッサンスが花開く。

キーパーソンである祖父英祖について、以下の事を知っておくと、イ・スンジェの名演をより深く感じて頂けるかも。英祖は、前の王妃亡き後、51歳年下の貞純王后を王妃に迎えています。その是非はともかく、母親はあのトンイ(同伊)こと淑嬪崔氏で、宮中の女性中最下級の井戸水くみムスリ出身、とても苦労した母親。そんな背景から、英祖を蔑視する者も多かった。とても民衆思いなのは、そのあたりから来るのでしょうか。均役法を実施したり実学を奨励したりと、官僚の利権社会真っ只中にあって革新的な善政を敷いた、まさにこの英祖あっての孫、正祖(イ・サン)という気がします。

そしてイ・サンの母に扮したキョンミリさん。劇中、親心から一度だけ間違いをしますが、その時の憂いに満ちた様子!歴史に残る悪役チェサングンもそうでした。善悪どちらを演じようとも、その人物の奥底の深い部分をたたえ、観るものを共感させる、素晴らしき女優。
(キョン・ミリイ・スンジェ、Personへ)

タイトル
イ・サン(李祘) Yi San
キャスト
イ・サン(李祘)(正祖チョンジョ、朝鮮第22代王)・・・・・・・・・・・・・イ・ソジン
ソン・ソンヨン(成松淵)(宜嬪成イビンソン氏、正祖の後宮)・・・・・ハン・ジミン
英祖(サンの祖父、李氏朝鮮第21代国王)・・・・・・・・・・・・・・・・・・イ・スンジェ
惠慶宮洪氏(ヘギョン宮ホン氏)(思悼世子の正室、正祖母后)・・・キョン・ミリ
チョンスン王妃(貞純王妃、英祖の正室)・・・・・・・・・・・・・・キム・ヨジン
ファワン翁主(和緩翁主)(英祖の末娘、思悼世子の妹)・・・・ソン・ヒョナ
ヒョイ王后(孝懿王后、正祖の正室)・・・・・・・・・・・・パク・ウネ
チョン・フギョム(鄭厚謙)・・・チョ・ヨヌ
ホン・グギョン(洪国栄)・・・・ハン・サンジン
パク・テス(朴大壽)・・・・・・イ・ジョンス
イ・サン子役・・・・・・・パク・チビン
ソンヨン子役・・・・・・・イ・ハンナ
チョン・フギョム子役 ・・・イ・インソン
パク・テス子役 ・・・・・・クォン・オミン
思悼世子(英祖の次男、イ・サンの父)・・・・・・イ・チャンフン
など・・

演出
イ・ビョンフン、キム・グノン
脚本
キム・イヨン
製作
2007年 韓国 MBC
上映時間
全77話+SP2回
韓国初回放送期間
2007年9月17日〜2008年6月17日
放送時間帯
月・火夜9時55分

1つ星2つ星3つ星4つ星5つ星 (まだ評価されていません)
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